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最高裁判所第三小法廷 昭和33年(あ)65号 決定 1961年10月31日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人豊田求の上告趣意第一点について。

論旨は、憲法違反を主張するが、その実質は、単なる法令違反の主張であって、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。(本件と同一事件について公訴の提起があり、これが不適法であったため公訴棄却の決定がなされ、その確定しない中に更めて本件公訴の提起があり、これに基いて第一審判決の宣告があったものであるけれども、その判決宣告前既に右公訴棄却の決定が確定し、先の公訴が提起当時に遡及してその効力を失って居るのであるから、同一の犯罪について二重の起訴のあった場合に当らない。)

同第二点の第一について。

論旨は、被告人の所論各自白の任意性及び真実性のないことを前提として判例違反を主張するが、記録を調べても被告人のこれ等自白の任意性及び真実性を疑うに足りる資料は存しない。所論は、前提を欠き、採用することができない。

同第二点の第二について。

論旨は、判例違反を主張するが、引用の判例は、何れも、事案を異にし、本件に適切でない。所論は、採用することができない。

同第二点の第三について。

論旨は、判例違反を主張するが、原審が、本件および川端隆襄に対する収賄被告事件を菅原勇吉に対する収賄被告事件に併合した上、所論各証拠を取り調べたことは、右併合事件の記録によって明らかであり、また所論証人尋問調書は、右川端に対する収賄被告事件の記録中に編綴されているから、所論各証拠を虚無のものであるということはできない。所論は、前提を欠き、採用することができない。

同第三点について。

論旨は、事実誤認と単なる法令違反の主張であって、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

また記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって同四一四条、三八六条一項三号により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 石坂修一 裁判官 河村又介 裁判官 垂水克己 裁判官 高橋潔 裁判官 五鬼上堅磐)

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